リスティング広告担当者50名に聞いた商標監視の実態調査【独自アンケート】
AdChecker が実施したリスティング広告担当者50名への独自アンケート。商標監視の実施率・不正出稿の発見頻度・対応にかかる工数・ツール導入の検討状況を、広告主のマーケ担当者・経営層向けにまとめました。
この記事でわかること
「自社名で検索すると、競合や転売業者の広告が出ているらしい」。最近こうした相談が増えてきました。指名検索の広告枠が便乗出稿に奪われると、本来は自社の売上になるはずだったクリックが他社に流れます。被害額の試算で月数十万円から数百万円規模になることも珍しくありません。
ところが、自社の商標がいまどれだけ便乗出稿されているかを正確に把握している企業は、実はそれほど多くありません。多くの担当者は「気になってはいるが、定期的な監視まで手が回っていない」状態にあります。
そこで AdChecker では、リスティング広告の運用に関わる広告主担当者50名を対象にアンケート調査を実施しました。商標監視の実施率・発見頻度・対応工数・ツール導入の検討状況を整理した結果から、現場の実感が見えてきました。
- ① 調査の概要と回答者の属性
- ② 商標を監視している企業の割合
- ③ 不正出稿の発見頻度
- ④ 対応にかかる工数と費用感
- ⑤ 商標監視ツール導入の検討状況
「自社の取り組みは進んでいるほうか、遅れているほうか」を比較する材料として読んでいただける内容にしました。
① 調査の概要
まず、今回の調査がどのような方法で行われ、どのような回答者から集めたものかを整理します。
調査の方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | リスティング広告担当者の商標監視に関する実態調査 |
| 実施主体 | AdChecker(株式会社メカニズム) |
| 調査方法 | インターネット調査(自社募集・調査会社経由の併用) |
| 調査対象 | 広告主企業に所属し、リスティング広告の運用・管理に関わる担当者 |
| 有効回答数 | 50名 |
| 実施時期 | 2026年4月 |
回答者は「広告代理店の社員」ではなく、広告主側の担当者に限定しました。代理店の視点と広告主の視点は商標監視に対する温度差が大きく、混在させると傾向がぼやけるためです。
回答者の属性
50名の内訳は次の通りです。
- 業種:通販・D2C 14名、人材・教育 9名、金融・保険 7名、クラウドサービス・IT 6名、士業・専門サービス 4名、その他 10名
- 月間広告費:100万円未満 11名、100万〜500万円 17名、500万〜2000万円 14名、2000万円以上 8名
- 担当者の役職:実務担当 27名、マネージャー 16名、責任者・役員 7名
特定の業種・予算規模に偏りすぎないよう、回答者の構成を調整しています。広告予算が大きい層は「課題感が強く回答しやすい」ためサンプルが偏りやすいので、中小規模の予算層も一定数含めました。
数字を読むときの前提
数字を読むうえで2点、補足しておきます。
第一に、今回の調査は「自社の商標に対する便乗出稿に関心がある層」が一定割合で含まれているため、世の中の広告主企業の平均像よりも、監視への意識がやや高めに出ている可能性があります。実際の業界平均は、本調査の数値より一段下がる前提で読んでいただくのが安全です。
第二に、有効回答数は50名です。全体の傾向をつかむには十分ですが、業種別・予算規模別に細かく分けた数字は母数が小さくなるため、割合ではなく実数(○名)で記載し、あくまで傾向の参考として扱っています。
② 監視している企業の割合
最初に確認したのは「そもそも自社の商標を定期的に監視しているか」です。結果はかなり分かれました。
全体の実施率
商標監視を「定期的に実施している」と回答した企業は、全体の 42%(21名) でした。
| 監視の状況 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 専用ツールやサービスで自動監視している | 9名 | 18% |
| 担当者が手動で定期的にチェックしている | 12名 | 24% |
| 不定期・気になったときだけ確認 | 15名 | 30% |
| まったく監視していない | 14名 | 28% |
「自動」と「手動」を合わせた定期監視層が21名(42%)、定期的ではない層が29名(58%)という分布です。およそ6割の企業が、自社の商標がいまどう使われているかを把握していない状態だと言えます。
予算規模による傾向
予算が大きい企業ほど監視率が高い傾向は、50名でも確認できました。母数が小さいため参考値ですが、月2000万円以上の8名のうち6名、500万〜2000万円の14名のうち9名が定期監視を実施していたのに対し、100万円未満の11名では2名にとどまりました。
予算が大きいほど被害額も大きくなるため対策の優先度が上がる、という当然の結果です。一方で、中規模の予算層に「規模に対して防衛の備えが追いついていない」企業が目立ちました。
業種による傾向
業種別は1業種あたりの人数が少なく、確たる比較はできません。そのうえで目についたのは、士業・専門サービス(4名)で定期監視を実施していたのが1名のみだった点です。自社名で検索される指名検索の比重が高い業種ほど、地方限定の便乗出稿に気づきにくいという課題があります(47都道府県で広告表示が違う理由 も参照)。
監視していない理由
「監視していない」「不定期」と回答した29名に理由を聞いたところ、次の点に集中しました(複数回答)。
| 理由 | 回答数 |
|---|---|
| 担当者の工数が足りない | 19名 |
| 監視の方法が分からない | 12名 |
| 被害の実態が分からず優先度を上げにくい | 11名 |
| ツール導入の費用対効果が読めない | 10名 |
| 経営層に説明する材料がない | 6名 |
特定の担当者頼りの運用では、目の前の入札調整や広告文の修正で精一杯になりがちです。「監視が大事なのは分かっているが、後回しになっている」というのが実情でした。
③ 不正出稿の発見頻度
次に、実際に監視を行っている企業が「どれくらいの頻度で何らかの不正出稿を発見しているか」を聞きました。
発見の頻度分布
定期監視を実施している21名のうち、過去1年間に何らかの便乗出稿・規約違反の広告を発見したのは 16名(およそ4分の3)でした。「うちは関係ない」と思っていた層でも、しっかり見れば見るほど何かしら見つかります。
| 発見頻度 | 回答数 |
|---|---|
| 月に1件以上発見している | 7名 |
| 四半期に1件以上 | 5名 |
| 半年に1件以上 | 4名 |
| 1年間で1件も発見していない | 5名 |
「1年間で1件も発見していない」と答えた層には、そもそも監視の範囲が狭くて気づけていないケースも含まれていそうです。たとえば東京からの目視チェックのみで運用していると、地方限定の出稿は仕組み上見つかりません。
発見した不正の種類
過去1年で不正出稿を発見した16名に、その内訳を複数回答で聞きました。
| 不正の種類 | 回答数 |
|---|---|
| 競合企業による「自社名 比較」「自社名 より安い」型の便乗 | 9名 |
| 転売・並行輸入業者による商品名キーワードの便乗 | 8名 |
| 認定外アフィリエイターによる商標悪用 | 6名 |
| 商標を含む紛らわしいドメインへの誘導 | 4名 |
| なりすまし型の偽サイト広告 | 3名 |
| 海外事業者による広告 | 2名 |
ひとつの企業が複数の種類の不正に遭遇している実態が見えてきます。「便乗出稿が起きるのは一部の有名ブランドだけ」というのは過去の話で、業種・規模を問わず複数のルートから商標が狙われる時代になっています。便乗出稿の手口を網羅した解説はアフィリエイト不正出稿の手口10パターンにまとめています。
発見してから対応までのリードタイム
発見から「広告停止に至る」までの日数も、発見した16名に聞きました。
| 対応完了までの日数 | 回答数 |
|---|---|
| 1〜3営業日以内 | 3名 |
| 4〜7営業日 | 4名 |
| 2週間以内 | 4名 |
| 1か月以内 | 3名 |
| 1か月以上かかった/対応できていない | 2名 |
「2週間より長くかかった」がおよそ3分の1です。媒体への申し立てに必要な証拠の集め方や、社内の意思決定フローが整っていない企業ほど、対応が長期化する傾向が見られました。即日対応の手順は競合に自社名で広告を出されたときの対応フローに整理しています。
④ 対応にかかる工数
不正出稿の発見・対応にどれだけ時間と費用がかかっているかも聞きました。
月あたりの監視・対応時間
定期監視を実施している21名の月間工数は次の通りです。
| 月間の監視・対応工数 | 回答数 |
|---|---|
| 5時間未満 | 5名 |
| 5〜10時間 | 6名 |
| 10〜20時間 | 5名 |
| 20〜40時間 | 3名 |
| 40時間以上 | 2名 |
中央値はおよそ 月10時間前後でした。担当者1人が数日に1回、半日かけて全国の検索結果を目視チェックしているような工数感です。実際には本業の合間に細切れで時間を使っている例が多く、効率はかなり悪いという声が目立ちました。
人件費換算でのコスト
月10時間を担当者の人件費に換算すると、年間で数十万円規模の社内コストになります。マネージャー層が確認まで関わると、すぐ100万円を超えます。
| 想定時給 | 月10時間の年間人件費 |
|---|---|
| 4,000円(実務担当者) | 約48万円 |
| 6,000円(マネージャー) | 約72万円 |
| 8,000円(責任者) | 約96万円 |
ここに加えて、検知後の媒体申し立て・社内の意思決定・場合によっては弁護士相談まで含むと、実質コストはさらに上振れします。監視はしていないように見える企業でも、不正出稿の対応に隠れた工数を取られているのが実態でした。
発見した不正の被害額試算
過去1年に不正出稿を発見した16名のうち、被害額を試算したことがあると答えたのは5名のみでした。その5名でも、1件あたり50万円から数百万円という回答が中心です。
裏を返すと、発見した企業の3分の2以上が被害額を計算できていません。被害が見えていないと、経営層に対策の必要性を説明できず、対策予算もつきにくくなります。費用に見合う効果を経営層に説明する考え方は商標監視ツールの稟議の通し方にまとめています。
⑤ ツール導入の検討状況
最後に、商標監視の専用ツール導入の検討状況を聞きました。
ツール導入の検討段階
| 検討段階 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| すでに専用ツールを導入している | 9名 | 18% |
| 導入を検討中(情報収集中) | 11名 | 22% |
| 導入を検討したいが優先度が低い | 15名 | 30% |
| 導入は考えていない | 15名 | 30% |
「すでに導入」と「検討中」を合わせると 20名(40%)。一方で「導入は考えていない」も15名あり、温度差が大きい結果でした。
検討している理由
導入済み・検討中の20名に、検討の動機を複数回答で聞きました。
| 検討の動機 | 回答数 |
|---|---|
| 担当者の工数を減らしたい | 14名 |
| 全国・24時間に監視の範囲を広げたい | 11名 |
| 検知時の証拠を残せる仕組みが欲しい | 10名 |
| 経営層から指示があった | 6名 |
| 過去に大きな被害があった | 5名 |
「担当者の工数を減らしたい」が最多でした。手動監視の限界を感じてからツール導入に動く企業が多い傾向が見えます。24時間体制をどう作るかは商標監視を24時間続ける方法で整理しています。
検討が止まっている理由
検討中の11名に「導入が進まない理由」を聞いたところ、次の点が壁になっていました(複数回答)。
| 検討が止まっている理由 | 回答数 |
|---|---|
| 費用対効果を社内で説明しきれない | 5名 |
| 比較すべきサービスが多く判断軸が定まらない | 5名 |
| 担当者だけでは決裁権限がない | 4名 |
| 監視対象キーワードの整理がついていない | 3名 |
| 既存の代理店との役割分担が決まらない | 2名 |
「費用対効果」と「比較軸」が二大要因です。サービスごとに対象範囲・通知の速さ・証拠保全の仕組みが異なるため、自社の課題と合わせて整理しないと判断が止まりがちです。主要サービスを横並びで比較した内容は商標監視ツール6選を比較に、稟議で必要な資料の組み立て方は稟議の通し方にあります。
「導入は考えていない」層の実情
導入を考えていない15名にも理由を聞きました(複数回答)。
| 導入を考えていない理由 | 回答数 |
|---|---|
| 被害が見えていないので必要性を感じない | 9名 |
| 予算がない | 6名 |
| 既存の代理店に任せているつもり | 4名 |
| 経営層の関心が薄い | 3名 |
「被害が見えていない」は、裏返せば「監視していないから見えていない」という循環でもあります。監視していない企業ほど被害を把握できず、被害が見えないから監視に踏み切れないという、対策が後回しになる典型的な流れがここに表れていました。
調査結果から見えた3つの仕組み上の課題
50名の回答を通して、共通する課題が3つ浮かび上がりました。
課題1:監視している層と、していない層の二極化
定期的に監視している21名と、不定期・未実施の29名の差は、業種や予算規模よりも「過去に被害を経験したかどうか」で大きく分かれていました。一度被害を見た企業は監視を始め、見ていない企業は始めないという構図です。被害は見ようとしないと見えないため、放置している企業ほど被害を過小評価する傾向があります。
課題2:監視に使う工数の隠れたコスト
月10時間という中央値は、年間に直すと約120時間。担当者1人で年間3週間ぶんに相当する時間が、目視チェックに溶けています。検知率は地域・時間帯・デバイスの組み合わせで限界があるため、かけた時間に対する成果が出にくい点も問題でした。すばやさと網羅性の両方を人手で担保するのは、もともと現実的ではありません。
課題3:経営層に説明する材料の不足
不正出稿を発見した16名のうち、被害額を試算したのは5名のみでした。被害が定量化されないと費用対効果が読めず、ツール導入の稟議も通りにくくなります。商標監視は「やらないと損が積み上がる」種類の投資なので、損失の見える化が最初の一歩になります。
まとめ
50名のアンケートから見えた現状をまとめると、次の通りです。
- 商標を定期的に監視している企業は 21名(42%)。およそ6割は不定期または未実施の状態
- 監視している21名のうち 16名 が過去1年で何らかの不正出稿を発見しており、月1件以上のペースも7名
- 月間の監視・対応工数は中央値で 約10時間。年間に直すと担当者1人ぶん3週間相当の隠れコスト
- 専用ツール導入の検討は 20名(40%) が進めているが、費用対効果と比較軸の整理で止まっている例が多い
- 「被害が見えていないから対策しない、対策しないから被害が見えない」循環が、共通の課題として浮かび上がった
調査結果からはっきり言えるのは、自社の商標がいま検索広告でどう使われているかは、見ようとしない限り見えてこないということです。便乗出稿は深夜・休日・地方を狙う傾向があり、業務時間内に東京のオフィスから手動で確認する運用では、仕組み上見つけられない領域が大きく残ります。
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あなたのブランドを、勝手に使わせない。
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